紅露はるかは自然風景を中心に、絵本の1ページのような世界をシンプルな構成で描いている。比較的小さな画面を中心としながらも、そこに描かれる風景は茫洋である。この茫洋な風景は、鑑賞者は夢想的なイメージの領域へと誘い、同時に描かれた小さな人物はどこへ行くのか、何を思うのかといったことを、近くも遠くもない距離感で、物語の行く末を見守るかのように想像させる。
一般的な無地の紙や絹を使用せず、柄つきの布を基底材に選んでいることにより、塗られた色の奥にさらに色や模様が浮かび、画面の奥深さを裏付けている。感じられる広がりはこの奥行きだけでなく、画面の外にまだこの世界が果てしなく広がっているかのような、平行的、周囲的な広がりをも感じられよう。画面全体を覆うように構成物を描きこむのではなく、背景的余白を大胆に広くとっている。その広がりの中では、同時に人の気配のない、自然的な静寂が満ちている。しかし静寂、といっても無音ではないだろう。そこに吹く風の音、木々のざわめき、川・海・雨といった水音、雪を踏みしめる音などなど、静かな中に響く音が聞こえてきそうである。これらのことが総合され、独特の空気感を表出している。
こうした空気感の創出、言い換えれば場面の設定が主軸となり、絵本的な物語性を更に生み出している。このことは、自身の絵画作品を用いた絵本を制作する際、絵本ありきで絵画を描くのではなく、絵画作品が完成したあとにそれを並べて物語を構築するという手法にも垣間見ることができる。
text: 佐藤康平 (札幌芸術の森美術館 学芸員)
紅露はるかHP: http://harukaharu.fc2web.com/
*作家さん、妊娠中の為、会期中は在廊いたしません。
追記となりますが、12月17日に元気な双子のお子さんをご出産なさいました!
来年の網走市立美術館開館40周年記念企画展 「鼓動する日本画展」に紅露さんも参加いたします。
[網走会場]2013年1月26日(土)~2月17日(日)
網走市美術館 第1・第2展示室北海道網走市南6条西1丁目
[札幌会場]2013年5月10日(金)~5月19日(日)
モエレ沼公園 ガラスのピラミッド スペース2
[岩見沢会場]2013年5月23日(木)~6月15日(土)
岩見沢市絵画ホール
[岩内会場]2013年6月19日(水)~7月15日(月)
木田金次郎美術館 展示室4
北海道にお越しの際は、是非。