今井アレクサンドルは、自己の内側に存在する何か、感情や精神の高まり、つまりは魂そのものを形にし、それらを芸術表現としてきました。世界的な画家である、父 今井俊満やその周辺の巨匠と呼ばれる作家から多くの事を学び、自身も30年近く制作にあけくれ没頭し、芸術を芸術とするべく人生をかけて挑み続けて来ました。全身全霊で筆を払った一瞬は、脈動する飛沫となって複雑に宙を舞い画面へと定着し、墨や絵の具の色は当時の熱を残し深い光りを放ち続けています。
芸術の定義は非常に曖昧で、人の数だけ存在していると言っても過言ではありません。人間の長い歴史を振り返えれば、気が遠くなるほどの多種多様の価値観や芸術が存在してきました。そのような曖昧な価値観を定型し、作品の巧拙を決定する為に、ある種の型が創世されて来たのだと思います。型や流派が存在すれば、そのなかでの善し悪しはありえるでしょうし、それらの価値観は芸術の歴史ともいえます。しかしながら、そのような型を超えて、今井俊満から今井アレクサンドルへと続く、非定型の芸術、人間の内的な物から産み出される形だけで戦うという事は、どれほどに困難な事でしょうか。
今井アレクサンドルの絵に、技術や批評的観点からの評価など、たぶん必要ではありません。また私が彼の絵から感じた、星の瞬きや、小宇宙、複雑な風の匂いをあなたと共有する事も不可能でしょう。それらの絵には人の数だけ異なる印象があり、感じる美しさもまた同様に異なるはずです。だから、今井アレクサンドルの魂を、あなたに直接感じていただければと思います。
作家も午後3時より在廊しております。下北沢にお越しの際は、是非ご高覧くださいますように。