人の記憶は、残念ながら時間の経過とともに虚ろいながら、いつしか遠ざかってしまう。ちょうど車窓から眺める風景に似てる。"人間の最大の失敗は忘却である"とは、ある思想家の言葉である。しかし、ふっとしたきっかけから甦ってくることがある。写真にはこうした覚醒的作用が潜んでいる。様々な記憶を辿ってみても思い出とするには何らかのインパクトや楽しみなど憶えているものだ。そういえば、描写された時間、空間には現実でありながら、時に夢よりもさらに夢に似ている現実であった気がしている。